
ジュネーブ駅構内をTGV乗り場へと移動。スイスからフランスへと渡る入国管理は、乗車前に済ませるそうで、窓口の前には結構な人が受付開始を待っていた。バックパッカーあり、ロードバイクを輪行袋に入れている人ありで、それぞれにスイスの初秋を旅してきたのだろうと思わせる人が多い。
朝、ホテルの朝食を食べたきりで、喉が乾いてお腹も減っていた。駅構内だと言うのに、まるで本場パリのカフェと見間違うようなカフェがあるのを発見した私たちは、ガラス張りのすぐ横の道路にバイクパックを置いて、自転車を見張りながら食事をした。
すぐに窓口前のベンチに戻り、パスポートやチケットの点検をする。約30分ほど待って、受付のドアが開いた先は、人が一人やっと通れるぐらいの通路だ。チケットとパスポートを提示し、エッサ、エッサとバイクパックを押しながら通り過ぎようとしたら、予想通り係員に呼び止められた。
「何?コレ?ちょっとこっちに来て」と列から出された大澤は
「自転車です。中を開けましょうか?」と、本当にパックの紐をほどこうとした。
「自転車?じゃ、開けなくていいよ。はい、行って」と面倒くさそうな顔で係員。
少しほっとしながら、行き止まりの自動ドアを過ぎる。その先は、もうフランスだ。すると今度は暗くて小さなホールになっていて、少し割れたイームズのベンチが置かれていた。売店を見ると、ウインドーに、冷えきってカチカチになっているのであろうクロワッサンサンドが並んでいた。

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暗い通路や階段を上って、TGVの明るいホームに出ると、さすがに心がワクワクとした。私たちが乗る12時57分発のTGVがホームに入ってきて、バイクパックを積み込むのに悪戦苦闘していたら素敵な係員さんが手伝ってくれた。
嬉しい!フランスはレディー・ファーストの国なのよね!と思う。きっと、これから先、パリのホテルまでこんな感じで行けるハズだわ〜と、指定座席に落ち着いた。4時30分にはパリのリヨン駅に着く予定。車窓からの移りゆく景色を見ているだけでも楽しいけれど、周りの人を見るとお弁当を食べたり、ワインで乾杯していたりする。とても気になっていると、結構な金額のスイス・フランがお財布に残っているのを思い出した。車中なら、まだ使えるはずだ。
「ちょっと、行ってくるね」と車内の売店に行き、クラッカーやワインを買って、席まで戻った。売店のお兄さんも、とても親切で紳士的だった。もう、何も心配する事なんてないわ〜と、ワンカップのようなパッケージのワインを飲みながら、久しぶりに訪ねるパリの街並みを思い出したりしていた。

何時間も本を読んで過ごしたポンピドー前のカフェは、まだあるのかな?トリフォーやマン・レイのお墓に私が捧げたお花は、あの後どうなったんだろう?焼きたてのバケット、オムレツ、とろけるようなチーズ、そして不思議と美味しい安ワイン。ジュリエット・ビノシュみたいに、恋人とポン・ヌフ橋で夜明かしとかしてみたい。美術館の数限りない宗教画、大人になった今の私は、どんな風に感じるんだろう?
10年ほど前、バック・パッカーでパリに滞在していた頃を思い出す。あの時は、お金もなんにもなくて、一人ぼっち。一日でも長く滞在するために節約しながら、過ごしていたっけな。今度来る時は、格好いいスーツケースとファッション、そして、パリの素敵なもの全てを買い物したいと思ったのを覚えている。今回はさすがにバックパックじゃないけど、おまけがバイクパックだもんね。またしても、お上品なマダムとはほど遠い旅になってしまったな・・・と景色を眺めては自嘲した。

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リヨン駅に着いて、早速、オペラ座近くのホテルに向かおうとタクシー乗り場を探す。駅のタクシー乗り場なんて、すぐに分かるだろうと思っていたら、サインを見間違えて、あちこちをウロウロして結構な時間&体力のロスに。バイクパックを引きずって歩くのが心底、イヤになってくる。
ようやくたどり着いた人だかりのタクシー乗り場で、順番を待つ。でも、どのバンタイプのタクシーも私たちをパスして乗せてくれない。駆け寄って交渉しても、私たちの荷物を見たら首を横にふって、次のお客を乗せてしまうのだ。何十台、見過ごしたんだろう?とにかく誰も乗せてくれないのだ。
「なんでやねん!?金、払うっちゅーねん」と大澤に抗議すると
「面倒なんちゃう?」と一言。二人同時は諦めて、一台ずつに分かれて行くしかないと思うのだが、それでも乗せてくれそうなドライバーが居ない。
「ちょっと行ってくるわ」と大澤が、タクシーの列から外れて止まっていたベンツのバンのタクシーに猛アピール。
「一人でええから!」と言っていたのにドライバーは
「ほな一台も二台も一緒やから、二人で乗ったら」と、カーゴスペースを整理してくれた。 通常、パリのタクシーは助手席にお客を乗せないものだ。だけど、この時ばかりはそうも言ってられず、道をよく知っている大澤が助手席に座った。私は、カーゴルームの片隅に中腰で座り、窓の外のパリに目をやっていた。信号待ちで車が止まると、闊歩しているパリジェンヌと目が合う。ホントに恥ずかしい。これには事情が・・・と思いながら、首をすくめるばかりだ。
オペラ座界隈のホテル前で、荷物代を加算した料金を支払ってタクシー降りた。早速、チェックインを済ませ、自転車はホテルのフロントに預かってもらった。
この日の夕食は大澤のお仕事仲間のイタリア人の方々と一緒に、ホテルから歩いて行けるグラン・カフェへ。「ケイコさん、何が食べたいの?」と聞かれ「生ガキ」と答えたら、とんでもなくバカデカイ前菜がやってきて爆笑した。食べきれないほどの生ガキ群を前に「パリはなんでもデカいね・・・」と苦笑する。だけど、パリはやっぱりキラキラしている。みんながお洒落で、この一瞬を思い切り愉しんでいるようにも見える。パンとチーズとハムがメインの素朴なスイスとは全く違う。引きつづきフォアグラ、エスカルゴなどの濃厚なお食事と重いワインに酔いしれる。BGMは大好きなピアノ、近くの席からは声高な中国語が聞こえてくる。世界中からいろんな人が何かを求めて、この地に集まってきている事を実感する。「スイスもええけど、パリもええなあぁ」と私は何度も繰り返した。

翌日、大澤は買い付けをするため、世界中から最新の生地が集まる「プルミエールヴィジョン」という展示会に出掛けていった。私はオペラ座やオルセー美術館を見たりして、一人で一日を過ごした。
サイクリングはいよいよ明日。カフェで一人、ビールを飲みながら、地図でパリの自転車道をチェック。街中に広がる石畳はかなり不安だけど、パリの人たちも自転車で走っているし大丈夫だろう。やっぱりセーヌ川沿いを走って、まずはエッフェル塔かな?と思いを巡らせた。

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予告
スイス・フランス・イタリア輪行は、数回のシリーズに分けてお届けします。
翌日はパリをツーリング!
次回のレポートにご期待ください。